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タスクの所要時間を正確に見積もるためのコツ

前回の記事『「この仕事、いつまでにできる?」に即答できますか?』では「個々のタスクの見積もりができれば、正確な納期を答えられる」と結びましたが、実際にやってみると所要時間の見積もりは案外難しいことに気づくと思います。そこで今回は、所要時間の見積もり精度を上げる有効な手立てについて考えてみたいと思います。


なぜ納期に間に合わなかったのか

実は、所要時間の見積もりが苦手な人には共通点があります。
それは「タスクひとつあたりのボリュームが大きすぎる」という点です。
実際にあった話を例にしましょう。私が入社2、3年目の新人だった頃の話です。
上司に資料作成の仕事を依頼されて、以下のようなやりとりをしました。

上司 「どのくらいかかりそう?」
私 「1週間もあればできると思います。」
上司 「この資料を作るには、いくつか課題を解決する必要があるけど大丈夫?」
私 「たぶん大丈夫だと思います。」
上司 「タスクボリュームは何時間くらいで見積もってるの?」
私 「5時間くらいですかね。」
上司 「根拠は?」
私 「いえ、過去の経験からそんなものかなと思いまして・・・」

この時の私の計画は、
【課題検討2日、資料作成3日、トータル作業時間は5時間】
といった大雑把なもので、正直なところ数字はほとんど勘でした。
結果は、ご想像の通りです。
結局トータルの作業時間は9時間におよび、最終的にこの資料を完成させるのに2週間もかかってしまいました。私の見積もりは甘すぎたわけです。

今回の失敗の原因はいろいろありますが、最大の問題は「実際の作業イメージがわかないままに所要時間を見積もった」という点にありました。具体的な作業イメージなくして、所要時間を見積もることはできないのです。ではなぜ作業イメージがわかなかったのでしょうか?それは、「タスクの粒度(粒の大きさ)が大きすぎた」からです。


大きなタスクも砕いてしまえば怖くない

大きく、複雑なタスクに取り組む際は、まずタスクを小さく砕くことからはじめます。
先程の「資料を作成する」というタスクも、具体的な作業を想像できるレベルまで砕いていれば、もっと正確な所要時間を見積もることができたはずです。

【 課題検討 】
課題1検討:30分
課題2検討
 関係者へのヒアリング:30分
 解決策検討:60分
課題3検討:40分

【 資料作成 】
インプット資料の読み込み:90分
資料構成検討:30分
キーメッセージ作成:60分
第一章XX(仮):30分
第二章XX(仮):90分
第三章XX(仮):60分
推敲と修正:20分

いかがでしょう。小さく砕くことで、具体的に必要な作業がはっきりしたことがわかると思います。ここまでくれば、勘に頼らずともある程度正確な所要時間を見積もれるはずです。ちなみに、最後の方のタスクに(仮)とついているのは「資料構成検討」タスクを終えてはじめて正確なボリュームがわかるためです。このようにタスクを細分化することで未確定要素もよりクリアになり、事前に計画変更の可能性があることを上司に伝えておくなど、リスクヘッジもできるようになります。


所要時間をうまく見積もるポイント

所要時間を見積もるにあたり意識してほしいのは「1タスクあたりの所要時間を90分以内にする」ということです。一般的に成人の集中力は90分が限度だと言われ、例えば大学の講義の一コマも90分で区切られています。この時間は人や状況によって多少前後すると思いますが、基本的には上限90分を目安にしてみてください。所要時間が長すぎるタスクは、集中力の問題はもちろん、前述の作業イメージを思い浮かべるステップにも悪影響を及ぼすので要注意です。


まとめ

所要時間を正確に見積もるための鍵は「タスクの細分化」にあることをお話しましたが、実はこれは「紙の手帳は上級者向け」で触れた「タスク設計」の作業そのものです。タスク設計で悩むことの一つに「どこまで細分化すべきか」という問題がありますが、その答えは、
①個々のタスクが(所要時間を見積もれる程度に)具体的であること
②目安として90分以内であること
の2点を満たすレベルまで、ということになりそうです。