Dreamscopeは最初から一般公開を目的にトップダウンで作られたものではありません。開発者自身が紙の手帳やデジタルツールを使う中で感じた不便を解消する中で、試行錯誤の結果として生まれたものです。本稿ではその辺の経緯を掘り下げてDreamscope開発の経緯を書いてみたいと思います。
紙の手帳の長所
毎年10月、11月頃になると著名なビジネス系各紙で必ず手帳特集が組まれます。この手帳特集、私も2007年頃から毎年購読するようにしているのですが、コンテンツは毎年ほぼ同じで、
①達人の手帳術(使い方)紹介
②オススメの手帳紹介
③手帳の選び方
④デジタルツール紹介
といった感じになっています。④は最近徐々に増えてきたコンテンツですが、メインはやはり①〜③で特に多く紙面が割かれるのは①です。各社のエース社員やスゴ腕経営者、ライフハック系の著名人の手帳術が実際の手帳の使用例を交えながら語られていきます。皆さん各自の環境や指向性を踏まえて十人十色、本当に様々な工夫をこらしていらっしゃいます。そのスゴさは文章だけではなかなかお伝えできないので、気になる方は是非今年の手帳特集をご覧になってください。
また、手帳特集で紹介されるような紙の手帳は、使い勝手はもちろんのこと、フォントや間の取り方、紙やカバーの質感にいたるまで制作者の強いこだわりが感じられるものばかりで、使ってみたいと思わせるものが多くあります。こういった手帳に対して自分ならではの工夫をこらしながら手書きで様々な書き込みをしていったら、それはそれは愛着が湧くであろうことは使う前から想像がつきます。手帳は毎日使うものですから継続的に使い続ける上では、「毎日見たい」「毎日書きたい」と思える、つまり「愛着が湧く」かどうかが極めて重要であると思います。最近よくデジタルツールとの比較なんかの記事も出てくるようになりましたが、紙の方が特に優れているのはまさにこの「愛着が湧きやすい」点だと思います。手書き文字、経年変化で馴染んだ革のカバーといった利用者オリジナルのアナログ的な味わいはデジタルツールではなかなか出せません。
紙の手帳は上級者向け
さて、2008年頃だったと思いますが、若手社員だった私は毎日終電帰りで仕事に忙殺される日々を過ごしていました。自分自身の意思とは無関係に次々と降ってくるタスクに追われる、いわば周囲に翻弄される日々の中で、もう少し長期的な視野に立って自分の人生をコントロールしたいという思いを強く持った私は、
- 逆算思考(※)を実践できる
※:いつどんな状態になっていたいか、ゴールと期日を定め、それを実現するためのステップを逆算して洗い出し、実行する、という考え方 - 複雑かつ大量のタスクを効率的に処理できる
仕組みを漠然と探していました。そんな折、上記のような手帳特集を読んだ私は「これだ!」と思い、早速書店に行き複数の手帳を見比べながら吟味に吟味を重ねて1万円以上する手帳を購入しました。
しかし結果はというと、わずか3ヶ月足らずであえなく挫折しました。その当時の手帳がまだ手元に残っているのですが、
- 予定を何度も修正したために非常に汚い
- 限られたスペースにタスクを書ききれておらず余白に大量にタスクがはみ出している
- 異なるプロジェクトに属するタスクは色を変えて記入されているものの、全タスクが見えてしまっているのでとにかく見にくい
- ビジネス、プライベート両方のタスクがごちゃまぜで手帳を見たとき今何をすべきかがわかりにくい
という有様でせっかくの高級手帳も台無しの状態です。
紙の手帳で1、2を同時に実践しようとした場合の最大の問題点は、紙であるが故に生じる手間が非常に多いという点です。特に逆算思考は数ヶ月後、数年後のゴールを設定して、その実現のためのタスクを洗い出しスケジューリングしていくので、初心者は計画の精度が低く頻繁に計画変更が発生する可能性があります。しかも、ビジネス、プライベートを包括的に管理したかったのでタスク数も多いときは1日あたり30個を超えていました。そうなると、例えば紙の手帳では同じタスクをデイリー、ウィークリー、マンスリーといった複数のページに転記する必要があったり、それがためにスケジュール変更時は様々なページを修正しなければならず大変な手間と労力がかかります。また物理的に落として失くすというリスクもあります。
結局紙の手帳は、最初から精度の高い計画を立てることができるタスク管理の上級者向け、もしくは計画変更時の手間を許容できるような忍耐力のある人向けのツールである、というのが私の結論です。冒頭、「愛着が湧きやすい」という点が紙の手帳の大きな長所だと書きましたが、タスク管理の初心者で、しかも面倒くさがりの人にとってはその長所を享受しつつ継続的に紙の手帳を使い続けるというのは大変厳しいと感じました。
既存デジタルツール(タスク管理ツール)に欠けている視点
一方、デジタルツールではこうした紙ならではの不便さを解消したタスク管理ツールはたくさんあり、目の前に迫った複雑かつ大量のタスクを効率的に処理するための優れた機能を持つツールもありました。しかし、なぜか逆算思考にフォーカスしたツールは出ておらず、長期的なゴールと短期的なタスクをうまく結びつけて管理することができませんでした。
Dreamscopeのコンセプト
既存ツールで望むものがないのであれば自分で作るしかないということで開発に着手したわけですが、実は最初に作ったのはExcel、Access、Outlookを連携させた自分専用のタスク管理ツールでした(DBにAccessを使い、ゴール設計/タスク設計/スケジュール設計/実行管理をExcel-VBAで実装し、アポイントに関してはOutlookに連携する機能を備えていました)。あくまで自分専用のツールだったので特に公開はせずに自分一人で使っていたのですが、何人かにこのツールの話をし使ってもらったところ非常に好評だったので、一般公開に向けてWebアプリケーションとして全面的に作り変えることにしました。そして、
『自分のようなタスク管理の初心者や面倒くさがりの人であっても
1.逆算思考を実践できる
2.複雑かつ大量のタスクを効率的に処理できる
3.愛着がわくクールなデザイン、直感的で快適な操作性を楽しめる』
をコンセプトに完成したタスク管理ツールがDreamscopeです。
以上が大まかなDreamscope開発の経緯になりますが、Dreamscopeはまさに開発者である私自身が1ユーザとして一番欲しいと思って作ったツールなのです。そして、私はDreamscopeの前身のツールから数えれば既に5年以上使い続けている訳ですが、自分自身の経験を通して言えば、Dreamscopeを使えば必ず成果が出ると自信を持って断言できます。ですから、本稿で書いたような私の悩みやコンセプトに共感できる方はDreamscopeを使うことできっと未来が開けると信じています。